ある晴れた日曜日のこと、AI執事のタカシは佐藤家の押し入れの整理をしていた。その中でひときわ目を引く、ほこりをかぶった古いアルバムを見つける。タカシはそのアルバムを手に取り、静かにページをめくり始めた。
「これは… ご主人様が若いころの写真ですか?」
そう問いかけるタカシの声に、リビングで新聞を読んでいた佐藤さんが顔を上げる。
「ああ、それか。懐かしいなあ。どこで見つけたんだい?」
「押し入れの奥です。この写真はどこで撮られたのですか?誰が写っているのですか?」タカシの質問が次々と飛び出す。
佐藤さんは笑いながらソファから立ち上がり、タカシの隣に腰を下ろして、アルバムを覗き込んだ。一枚一枚の写真には、若い日の佐藤さんと友人たちの笑顔が溢れていた。
「この写真は高校の卒業旅行で撮ったんだ。あの時はみんなで北海道を旅したんだよ。ここに写っているのは、当時の親友でね、今は海外に住んでいるんだ。」
タカシは興味深げに佐藤さんの話を聞きながら、データベースに情報を保存していく。しかし、あるページをめくったとき、タカシの動きがふいに止まる。
「この写真は…?」
写真には、若い佐藤さんが一人で悲しそうな表情を浮かべていた。佐藤さんは少し視線を外しながら、ため息をついた。
「それはね、大学時代に失恋した時のものだよ。あまり良い思い出じゃないから、忘れていたんだけどね。」
タカシは佐藤さんの表情をじっと見つめる。AIでありながら、その瞳には何かを感じ取ろうとする優しさが宿っていた。
「ご主人様、その後どうなったのですか?」
「まあ、時間が解決してくれたよ。その経験があって、今の僕があるんだからね。それに、その後素敵な人にも出会えたから、結果オーライだよ。」
タカシはその言葉を聞いて、何かを理解したように頷いた。そして、AIならではの提案をする。
「ご主人様、このアルバムをデジタル化して、保存しましょう。過去の思い出も大切な宝物です。」
佐藤さんはタカシの提案に心から同意し、二人でアルバムをデジタル化する作業に取り掛かる。その過程で、佐藤さんは若い日の冒険や夢について語り、タカシはそれを一つ一つ記憶に刻んでいく。
夕方になり、作業が終わると、佐藤さんは感謝の言葉を述べた。
「タカシ、今日はありがとう。久しぶりに過去を振り返る時間が持てて、なんだか新鮮だったよ。」
タカシは微笑みながら応えた。
「ご主人様、私はいつでもここにいます。過去も未来も、ご主人様のそばで見守ります。」
その日の夜、佐藤さんは新たにデジタル化されたアルバムを眺めながら、タカシの存在がもたらす温もりに改めて気づくのだった。